第6章:破産者の生活(3)

破産申し立て後のもう1つの仕事先、それは清掃事務所での仕事とほぼ同時期に始めた某ファーストフード店のデリバリーライダーです。 仕事探しの時何よりこだわった事それは、時給1200円以上、また住居から自転車で通える範囲、ということでしたが、運よ…

第6章:破産者の生活(2)

新しい仕事場のひとつ、清掃事務所での仕事について書きたいと思います。 端的にいえばゴミ屋さん、収集車と一緒に街中を移動し、各所のゴミを収集車に積んでいく、あの仕事です。 仕事の初日、午前中研修を終えると、職場ではストックヤードといわれるゴミ…

第6章:破産者の生活(1)

第1回の債権者集会が終わった頃、その頃の私の生活は、とにかく毎日仕事をしていました。仕事といってもアルバイト、清掃事務所とファーストフード店のデリバリーライダー、1日休みの日は月に2日くらい、その年の12月は月間で288時間仕事をし、手取り…

第5章:債権者集会(2)

1巡目に呼ばれた人達の集会が始まりました。弁護士は私に気を遣い、「あのテーブルはたぶんこんな話をしている。このテーブルはもう2回目以降だから債権者がほとんど来ていない。」などと話しかけてくれました。私は初めての光景に見入っていました。早い…

第5章:債権者集会(1)

私は過去に2度、社長に就任する前に債権者集会というものに債権者として出席した事がありました。1社は倒産、もう1社は会社更生法による更生を前提とした事案でした。その場面は、裁判官、管財人、申し立て代理人、そして破産者がひな壇に座り債権者と対…

第4章:管財人との仕事(3)

管財人と何度かお会いするごとに、管財人の眼が変わってきました。立場がら当然ですが、最初は犯罪者を見る検事のような眼、こちらが勝手にそう感じていただけかも知れませんが、そう思いました。それが少しずつ、優しさを感じる眼になっていきました。 信頼…

第4章:管財人との仕事(2)

第1回目の債権者集会は通常破産申し立て日から3か月後になります。私の場合も例外ではなく、3か月後の令和元年11月20日と決まっていました。弁護士からは「債権額、債権者数からすれば、おそらく2回の債権者集会で終了すると思う」と聞いていました…

第4章:管財人との仕事(1)

その次に管財人と会ったのは面会から4日後、事務所と倉庫の確認をしたいとの事で、事務所で会いました。私は約3週間ぶりに事務所に行きました。 事務所と倉庫の大家とはすでに管財人が直接連絡を取っているとの事で、完全退去までの家賃は破産財団から支払…

第3章:破産申し立て(2)

破産管財人との面接は、管財人の弁護士事務所で行う事になりました。破産申し立て代理人弁護士とビルの1階で待ち合せして、8階にある管財人の事務所に向かいました。私は白無地のYシャツ、紺色のスーツ、ネクタイはグレー、極力控えめで且つ敬意を持った服…

第3章:破産申し立て(1)

仕事探しと並行して、弁護士と取りまとめている破産申し立て書類の作成も大詰めを迎えていました。指示を受けては書類にまとめ、チェックをしてもらっては直しの繰り返し、約1カ月、ほぼ毎日のようにメールでのやり取りをしていました。 数字的な資料は、会…

第3章:仕事探し(3)

物事には必ず流れというものがあって、そういう事は信じるタイプです。ひとつ仕事先が決まり、同時にあたっていた某ファーストフード店のバイクデリバリー、こちらもその3日後に採用していただける事になりました。いい流れを感じました。 バイクはほとんど…

第3章:仕事探し(2)

面接はスーツを着ていきました。今までの面接もすべてそうです。履歴書の職歴には、「会社を倒産させて自己破産手続き中の元経営者」とは書けませんので、前職は廃業と書き、そのため新たな仕事を探していることにしていました。 面接をして下さった採用担当…

第3章:仕事探し(1)

実は親しかった得意先の方から、当面の生活費の工面について好意ある提案をいただいていました。「うちの直近の売り上げを報告しなければいい。その金額を奥さんの口座に振り込んであげる。そうすればそのお金は表にでないよ。」約50万くらいだったと思い…

第2章:倒産(5)

自宅まで来る債権者はいませんでした。すべての業者さんと良好なお付き合いをさせてもらっていましたが、お金の事になればそれは別の問題、当然です。私も以前取引先企業が倒産した時、相手方の社長宅まで行った事がありましたから、その気持ちはとてもよく…

第2章:倒産(4)

最後に事務所にいた2週間、さまざまな事がありました。 取引先、仕事の発注側の担当者が数社訪ねてきました。まず事実確認です。なじみの担当者に事情を説明し謝罪するのはとても心苦しいものでした。発注側の会社さんには金銭的な迷惑をかける事はありませ…

第2章:倒産(3)

私には、当面会社に行かなければならない事情がありました。それは、破産申し立て用の資料づくりや事業の残務処理です。自宅にはパソコンなどのインフラは整っていませんでしたし、あらゆる資料は持ち出せる量ではありませんでしたので、それができるのは会…

第2章:倒産(2)

午後11時過ぎ、私は自宅に帰宅しました。子供たちはすでに成人して自立していましたので、今は家内とふたり暮らし、でも今日は家内はいません。家内を巻き込まないように昨日から親戚宅へ身を寄せさせてもらっています。誰もいない暗い自宅に、私は帰宅し…

第2章:倒産(1)

会社に戻るとすでに半数の社員は戻っていました。弁護士の姿を見て勘のいい社員は、「取引先の関係者ではない」とすぐに察したと思います。社内に今まで感じた事がない緊張感が漂いました。私は、「詳しい事は全員揃ってから話すから、こちらは弁護士の○○先…

第1章:倒産までの状況(16)

家内には、念のためXデーの前日から私と喧嘩をしたという理由で親戚宅に身を寄せてもらう事にしました。債権者とのトラブルをできるだけ回避するためです。弁護士の介入通知で金融関係からの催告は法的にストップできますが、それ以外の債権者へは法的な効力…

第1章:倒産までの状況(15)

Xデー、それは一切の営業活動を停止し、債務整理を弁護士に一任したことを宣言する日、本日をもって倒産準備に入りましたと関係者すべてに伝える日です。そして裁判所への破産申し立ては、延納を申し入れた税務署に配慮してできるだけ早く、Xデーから1カ月…

第1章:倒産までの状況(14)

今日までの選択肢の中に、倒産という考えがなかったわけではありません。しかしそれは人生の敗北であり、また会社の銀行債務に関しては当然連帯保証をしているわけですから、自己破産もしなければなりません。破産とは、無一文になり、お金、財産、信用、そ…

第1章:倒産までの状況(13)

午後4時頃、私は目を覚ましました。居間にいくと、家内は台所で何かをしていました。「起きた?、お腹すいたでしょ」そう話しかけてくれました。家内は一睡もしていなかったと思います。そしていつもと同じ食事を用意してくれました。会話のないまま食事を…

第1章:倒産までの状況(12)

私の頭の中は、少しずつ現実に戻されていく感覚でした。何かを話さなければいけない。そう考えながら、今のこの醜態を友人にはさらしたくないと、直感的にそう思いました。「ごめん、ありがとう、あとは2人で話したいから、必ず連絡するから」そう友人に伝…

第1章:倒産までの状況(11)

時間は、午前3時を回りました。私は亡き母親の写真に向かって、こんな言葉をかけていました。「もしこの方法が間違っているなら、母さん教えてね」 少し涙が出ました。スマホからは、繰り返し好きだった曲が流れていました。 すると、午前3:30頃、予期…

第1章:倒産までの状況(10)

倉庫に向かう途中、私はコンビニで350mmの缶ビールを1本とつまみのピーナッツを買いました。カバンの中には、遺書、知人から以前もらった睡眠薬が2錠、そして今は亡き母親の写真が入っていました。 倉庫に着いた私は、手際よくテストをした時のように、…

第1章:倒産までの状況(9)

自殺をすると決めた日、その日が近づいてきました。 自殺をすると決めた日の2日前、私は会社近くの資材倉庫で、倉庫の天井の頑丈な鉄骨の梁に直径9mmのナイロンロープをかけ、試しに首にかけてほんの一時、全体重をのせました。苦痛より先に、意識がふわ…

第1章:倒産までの状況(8)

自殺を考える人のほとんどがうつ的状態になっていると、以前何かの書物で読んだ事がありました。当時の私もまさにそういう状態だったと思います。 私は、会社にいない時間が増えました。社員が出社する前に出社し、その日の業務指示をメールで送信、その後は…

第1章:倒産までの状況(7)

今のこの状況は、家族はもとより、会社関係の誰にも話をしていませんでした。経理の社員だけは、私の異変に多少なりとも気づいていたのかも知れませんが、ただただ、ひたすら、私は一人で考えていました。そして見えた1つの最良と思える方法・・・ 私は個人…

第1章:倒産までの状況(6)

令和元年の5月も半ばを過ぎた頃、とうとう私自身の力で見出せる手立てが一切なくなりました。その頃になると、以前から気になっていた不眠と理由のわからない身体全身の痛みが日増しに強くなり、これがうつ的症状である事にも気づきました。以前、うつで悩…

第1章:倒産までの状況(5)

FXで資金を増やそうと考えた私は、朝から晩までFXについての解説書物を読み、またネットで検索をしてはその仕組みや攻略事例などを見ていました。そして2週間後、私は自身の信用で借り入れができる最後の50万を元手に、FXを始めました。結果は、ご想像の…