第1章:倒産までの状況(11)

時間は、午前3時を回りました。私は亡き母親の写真に向かって、こんな言葉をかけていました。「もしこの方法が間違っているなら、母さん教えてね」

少し涙が出ました。スマホからは、繰り返し好きだった曲が流れていました。

 

すると、午前3:30頃、予期せぬ事が起きました。突然、閉めてあるシャッターが音をたてて揺れました。「ガタ!ガタ!ガタ!ガタ!」「ガタ!ガタ!ガタ!ガタ!」

私は最初、風が吹いているのか?、と思いました。数秒たってまた揺れました。「ガタ!ガタ!ガタ!ガタ!」「ガタ!ガタ!ガタ!ガタ!」2度目の揺れが止まったあと、今度は床においてあるスマホが、「ビィーン!、ビィーン!」と振動して響きました。着信の画面には、家内の名前が出ていました。5~6回振動したのち、止まりました。「何でこんな時間に家内から?」そう思った直後、またシャッターが揺れました。私は事態を把握しました。

私は大きくため息をして、閉めてあったシャッターのロックを外し、ゆっくり下から上へ引き上げました。シャッターの前には家内と、家内と共通の友人が立っていました。

 

「何してるの?」家内が私に、そう尋ねました。

「何で来た・・・何で来た・・・」

 

独り言のように、私はそう呟いていました。私はもう1度大きくため息をして、家内だけを中に招き入れました。中の様子をみた家内は、「死のうとしてるの?、何で?、何があったの?」と私に聞きました。黙っていると家内は、夜現場に行くと外出した時の私の様子がいつもと違った事、その事が気になって眠れなかった事、普段外出時の待ち合せ用にと2人でスマホに入れてあるGPSアプリが一向に倉庫から動かない事、真夜中にも関わらず友人に電話をしてその事を話したら、それならと車を出してくれた事、等々、しばらく家内は、一方的に喋っていました。

 

私は心の中でこう呟いていました。「失敗した・・・」

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