第3章:破産申し立て(2)
破産管財人との面接は、管財人の弁護士事務所で行う事になりました。破産申し立て代理人弁護士とビルの1階で待ち合せして、8階にある管財人の事務所に向かいました。私は白無地のYシャツ、紺色のスーツ、ネクタイはグレー、極力控えめで且つ敬意を持った服装にしました。
破産管財人は、弁護士協会に登録されている弁護士の中から裁判所が選任します。もちろん破産事案に熟知した弁護士が選任されますので、逆に破産を申し立てる側の代理人弁護士として破産者を援護する事もあります。
とても弁護士事務所らしいオフィスでした。通された応接室の壁には本棚があり、法律書物や過去の最高裁判例の資料ファイルなどがびっしりと並べられていました。
「管財人の○○です。彼は○○弁護士、私の補佐をしていただきます」
管財人は私の向かい側に立ち、そう挨拶しました。今までの人生で弁護士という肩書きの方と話をするのはおそらく10人目くらいと思います。眼鏡の奥からの眼光が今までのどの弁護士よりも、鋭さを感じました。
面接は1時間くらいだったと思います。あまり詳しくはここでは書けませんが、申し立て資料を見た管財人からの質問は、
創業者への退職慰労金支払いが資金繰りが苦しくなってから以降も続けられていたのはどうしてか、これが偏頗弁済にあたらないかどうか、
個人破産に関して、FXでの損失額が負債総額に対してどのくらいの割合になるか、
個人の保有する資産として計上してある40万円相当の貴金属はまだ手元にあるか、
などの内容でした。
こちらが提出した申し立て資料は管財人の手元にもあります。至るところに付箋をはり、今後確認すべき事項を受任後1日ですでに明確にしているようでした。
私は丁寧に質問に答えました。
まず取りかかるべき事は事務所と倉庫の明け渡し、会社が保有する資機材の売却、
そして私の所有する(正確には私と家内が所有する)不動産の売却処理、
そのように指示を受けました。
「明日以降、会社宛てと個人宛ての郵便物はすべて管財人の方に転送されるように手続きをしてあるので、それも承知しておいてください」
最後にそう説明を受けました。
終始笑顔はありません。管財人は破産者と債権者の中間に立つ人、
破産者の申し立てに間違いや不正、虚偽がないか、裁判所の代わりに厳正に確認する人、
この日その事を確実に実感しました。
こうして、第1回目の面接は終了しました。