第1章:倒産までの状況(13)

午後4時頃、私は目を覚ましました。居間にいくと、家内は台所で何かをしていました。「起きた?、お腹すいたでしょ」そう話しかけてくれました。家内は一睡もしていなかったと思います。そしていつもと同じ食事を用意してくれました。会話のないまま食事を終えると、いつもと同じく、珈琲を入れてくれました。珈琲と一緒に、一通の手紙を私に差し出しました。私は黙ってそれを読みました。手紙には、昨夜の件で彼女が思った事を書いてくれていました。「貴方がいなくなったら、どのように生活をし、時を過ごしたらよいのかわかりません。考えるだけで寂しくてたまりません。でも今のこの問題を、どうやって解決したらよいのか、今はわかりません。」そんな思いを便箋に3枚、びっしり書いてくれていました。私はその手紙を読みながら、はばかる事なく涙を流していました。口惜しさと情けなさがこみ上げてきました。

涙が止まるのを待って、私は彼女に、「何か違う方法を考える」そう話しました。

 

そしてその晩、私は会社を倒産させる事を決意しました。

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