第1章:倒産までの状況(14)

今日までの選択肢の中に、倒産という考えがなかったわけではありません。しかしそれは人生の敗北であり、また会社の銀行債務に関しては当然連帯保証をしているわけですから、自己破産もしなければなりません。破産とは、無一文になり、お金、財産、信用、それらすべてを失い、たった一人、世間に裸で放り出される、死ぬ事と一緒、そんなイメージを持っていました。また社長というプライドを勝手に背負っていましたので、生き恥をさらして生きていく事はとても耐えられるものではない、と思っていました。そういう意味でも、私の選択肢は自ら死ぬ事しかなかったのかもしれません。

が、私は死ねなかった。

 

「死ぬ覚悟があれば何でもできる。1度死んだのだから、とにかく生き直してみよう。」心の中でそう思うようになっていました。

 

翌日、私は朝から会社に行き、インターネットで近隣にある弁護士事務所を調べました。「とにかく1度話をしてみよう」そう考えていました。そして2日間で3人の弁護士と面談しました。弁護士からの話を踏まえ、私はその後のキャッシュフローを試算し、弁護士費用、申し立て費用は捻出できるか、従業員への給料は払えるか、誰にどのくらいの損失を与えてしまうのか、自分の当座の生活はどう乗り切れるか、何をどのように進めればいいのか、などをひたすら考えました。幸い、計算上1500万円近い売掛金がありましたので、早々に手を打てば少なくとも破産費用、従業員への直近の給料と解雇予告手当、までは十分に払える見込みがありました。

 

そこから導かれたXデーは次の給料日、令和元年7月20日・・・。

 

私は自分なりに考えたプランを元に、3人の弁護士の中から最も信頼できると思ったA弁護士に再度面談を申し入れ、自分のプランを伝えました。令和元年6月28日でした。自殺し損ねた日から8日後の事です。A弁護士は概ねこのプランを承諾してくれました。ただ1つだけ問題がありました。それは6月末期日の消費税を納税してしまうと、7月20日の給料日には資金ショートをしてしまう事でした。A弁護士は私に、「税務所に早々に延納の申し入れをしてみて下さい。今までの実績からすれば承諾をしてくれます。これだけの売掛金があれば、未納となる消費税は後々の処理で財団債権としてちゃんと支払われます。少し猶予をもらいましょう」そうアドバイスをしてくれました。

直近のプランが固まりました。

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そしてその日私は、A弁護士が所属する弁護士事務所と正式に委任契約を結びました。