第3章:仕事探し(1)

実は親しかった得意先の方から、当面の生活費の工面について好意ある提案をいただいていました。「うちの直近の売り上げを報告しなければいい。その金額を奥さんの口座に振り込んであげる。そうすればそのお金は表にでないよ。」約50万くらいだったと思います。この方は以前にも関係する企業が倒産、社長も自己破産をした経験があり、その時頼まれて便宜を図ったそうです。そしてうまくいった。とても人情味のある方です。しかし私は丁重にお断りしました。それより、残ったお金はちゃんと従業員や債権者にまわさなければいけない。真にそう思いました。

 

仕事探しをする上で決めた事がありました。

「ダブルワークと在宅ワークの3本柱で当面収入を得る」

「時給は1200円以上のところを探す」

「とにかく自宅から自転車で通える範囲にする」

これで月の手取りで35万を目標にする事にしました。

 

しかし、ご想像の通り、そう簡単には事は進みません。今までの業種の経験と経営者としての経験を除けば、私にあるスキルは自動車運転免許と自己流のパソコン、ワードエクセルくらいなものです。何より年齢50を過ぎています。テレアポ、遊戯店、酒屋、ピザ店など・・・6社面接を受けて採用してくれるところはありませんでした。

正直これが現実かと、焦りました。

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仕事探しを始めて10日目の頃、私は朝から自転車で近所を走っていました。先に決めたように、ダブルワークをこなすためには家から近くなければいけない。私は自分の足で仕事を探そうと、自宅から半径2キロの範囲を走っていました。

すると、住み慣れた地元の普段なにげなく通り過ぎていた建屋、「ここは何の会社?」と思い入口にまわってみました。「○○市清掃事務所」と書いてありました。4階建てのしっかりした建物です。奥の敷地に町でよくみかける車がありました。ゴミ回収車です。「ゴミ屋さんだ」私は呟きました。入口の横に広告掲示板があり、そこに臨時職員募集の張り紙がありました。

「月16日勤務、日給10350円、午前7:30~午後4:30」

とにかく何か仕事を始めなければいけない状況でした。

募集の張り紙に記載されている電話番号を控え自宅に戻りました。夕方、電話をかけました。応募したい旨を伝えると、「とにかく体力的にはきついですよ。何よりまだ暑い。大丈夫ですか?」と、どうしても面接をしてもらいたかったので、「若いころから体力には自信があります」と話しました。「じゃあ1度面接をしましょう」とても有難い対応でした。

 

翌日私は、履歴書を持参して「○○市清掃事務所」に面接に伺いました。

7社目の面接でした。