第2章:倒産(3)

私には、当面会社に行かなければならない事情がありました。それは、破産申し立て用の資料づくりや事業の残務処理です。自宅にはパソコンなどのインフラは整っていませんでしたし、あらゆる資料は持ち出せる量ではありませんでしたので、それができるのは会社だけでした。それと同時に、私が会社にいることで、もし取引先や債権者が訪ねてきた場合、謝罪の気持ちだけは直接伝えられる、そうも考えていました。

 

いつも通り、朝神棚にお参りし、植木に水を上げました。しかし私以外誰ひとり、出社はしてきません。昨日付で全員を解雇し、業務を停止させた事の現実を実感しました。

 

ただこの事務所も、2~3日中には大方の関係方面に弁護士介入通知が行き渡ります。電気や電話などは、概ね2週間後くらいには止められる、と弁護士から聞いていました。それまでは毎日ここに来て、できる限り今やるべき事をやろう、そう考えていました。ここが使えるうちにやるべき事は山ほどありました。

 

この日から約2週間、私は事務所に毎日通いました。

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