第1章:倒産までの状況(10)
倉庫に向かう途中、私はコンビニで350mmの缶ビールを1本とつまみのピーナッツを買いました。カバンの中には、遺書、知人から以前もらった睡眠薬が2錠、そして今は亡き母親の写真が入っていました。
倉庫に着いた私は、手際よくテストをした時のように、天井梁の鉄骨にロープを結びました。いつでも上れるよう脚立を立て、その下に遺書を並べて置きました。
早番の社員が倉庫にくるのは午前6時30頃、その日の早番はわかっていたので、私の遺体をみつけるであろう社員が少しでも驚かないように、社員が来る2時間くらい前に実行しようと決めていました。首つりは時間が経過するほど、身体のすべての穴から水分が出てとても酷い状態になると聞いていました。
倉庫にはデスクがないため、私は壁に母親の写真を貼り、その前に座りました。スマホで好きだった曲、思い出のある曲をかけて聞きました。
母親に自らの意思で死ぬ事を詫びていました。
缶ビールを少しずつ飲みながら、ゆっくり時間を過ごしました。
とにかく至って不思議なくらい冷静でした。午前4時になったら睡眠薬を飲んで、午前4時30分になったらロープに首をかけよう。
それまで、自分の人生を振り返ろう。
生まれて初めて経験する不思議な時間が、過ぎていきました。