第1章:倒産までの状況(16)

家内には、念のためXデーの前日から私と喧嘩をしたという理由で親戚宅に身を寄せてもらう事にしました。債権者とのトラブルをできるだけ回避するためです。弁護士の介入通知で金融関係からの催告は法的にストップできますが、それ以外の債権者へは法的な効力は発生しません。私は何を言われても、何をされても仕方ないと覚悟をしていましたが、家内はそうではありません。会社の倒産、私の破産とは無関係なので、そのための予防措置です。そして私は、Xデー後も申し立て準備のため今まで通り会社に行き、自宅に戻り、もし債権者が訪ねてきたら、向き合って謝罪の気持ちだけは伝えよう。そう考えていました。

 

Xデー当日、私は朝から経理社員と銀行に行き、社員の給与振り込みの手続きなどを済ませました。「税理士さんと打ち合わせがあるから」とそのまま通帳と実印を持って外出し、再び銀行に行きすべての資金を引き出し、まずその中から弁護士への破産申し立て費用を送金し、残りを弁護士の預かり金口座に送金しました。その後事務員に電話を入れて、「今日私から大事な話があるので、帰社したら全員事務所にいるようにとみんなに伝えて」と指示をしました。

 

通常の業務では、社員たちは午後4時頃帰社し、その後事務処理をして午後6時に退社します。午後4時30にはみな帰社していると予想し、弁護士には午後4時に会社に来てもらう事にしていました。それまで、私は外で時間を過ごしました。これから起こるであろう事態を想像し、あらゆる状況での対応の仕方など、ギリギリまで考えていました。1つだけ決めていた事、「正直に話をする事、逃げない事、これだけは絶対に貫こう」そう心に決めていました。

 

酷暑の夏、とにかくひどく暑い日でした。

私は会社近くで弁護士と合流し、事務所に戻りました。

 

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