第5章:債権者集会(2)
1巡目に呼ばれた人達の集会が始まりました。弁護士は私に気を遣い、「あのテーブルはたぶんこんな話をしている。このテーブルはもう2回目以降だから債権者がほとんど来ていない。」などと話しかけてくれました。私は初めての光景に見入っていました。早いところは5分、遅い所でも15分くらいで審議が終了していきます。終わったところから順にまた次の人達が呼ばれ、新たに審議が始まります。
私は3巡目あたり、始まって20分くらいで名前を呼ばれました。
私は弁護士と一緒に席を立ち、指示されたテーブルに向かいました。裁判官と思われる方がすでにいます。管財人もテーブルに来ました。管財人とはこの3ヵ月、さまざまな場面で会ってきましたが、今日は最初にあった時の厳しい表情をしていました。
そしてほかに5名、債権者と思われる人たちが用意された席につきました。その中には付き合いのあった協力会社さんが1社だけいて判りましたが、ほかの方々は判りませんでした。
私は全体に目をやり、頭を下げて席につきました。
「それではまず、㈱○○○○の債権者集会を行います。管財人から処理状況を報告して下さい。」裁判官がそう発して集会が始まりました。参加者の手元にA4紙の資料が1枚配られ、そこには負債金額の集計と財団ですでに回収した金額、今後回収見込みの金額、財団から優先して配当される項目と金額などが書かれていました。管財人は資料に沿って話をはじめ、未払いの公租公課と元従業員の未払い賃金、解雇予告手当を財団債権及び優先債権として配当し、その残りを一般債権者に分配、若干ではあるが配当ができる見込み、また会社の方の処理はあと未収の売掛金を回収してすべて終了の予定、と、実に簡潔に説明しました。
「何か質疑のある方はいますか?」裁判官が債権者に尋ねました。質疑はありませんでした。「なければ次回債権者集会を2か月後の○月○日として、第1回債権者集会は終了します。引き続き破産者○○○○氏の債権者集会に移りますので、○○○○氏に対して債権をお持ちの方はそのまま席に残って下さい」
これで会社に関する第1回債権者集会は終了です。ここで2名が席を立ちました。残った3名は会社と私との両方に債権を有する金融関連の債権者と思われました。
私個人の集会も同様に、全員に1枚の資料が配られ、管財人から処理状況の報告が行われました。個人分の処理状況としては、所有不動産の売却や関連会社持株の売却がまだ未処理であると説明がありました。
債権者の1人が、「不動産は確認したところ借地ですが、十分買い手のつく物件のようですね。」と発言しました。間違いなく金融関係の担当者です。管財人は、「現在土地所有者との交渉中で、話がつき次第売却公募の準備に入ります」と回答しました。
質疑はこれだけで、同様に次回集会を会社の集会と同日に実施することを確認して、集会は終了しました。
終了後、管財人と少し会話をして、退室しました。
私は2~3日前から緊張していましたので、退室と同時にどっと疲れが出ました。
「すぐ終わったでしょ?」弁護士が軽く微笑みながら話しかけてきました。
私は体の力が急に抜けたような、そんな感覚に襲われました。