第1章:倒産までの状況(9)
自殺をすると決めた日、その日が近づいてきました。
自殺をすると決めた日の2日前、私は会社近くの資材倉庫で、倉庫の天井の頑丈な鉄骨の梁に直径9mmのナイロンロープをかけ、試しに首にかけてほんの一時、全体重をのせました。苦痛より先に、意識がふわっと浮くのを感じました。プロレスなどの締め技で、意識が飛ぶ、という状態です。
私は、「ああ、これでいける」と思いました。
自殺をすると決めた日の前日、その日は日曜日で、家内と久しぶりの休日をふたりで過ごしていました。もちろん悟られないよう、ただ心の中で、自分の不甲斐なさを詫びていました。その日の夜、私は急な仕事の連絡が入ったと嘘を言って会社に行き、自分の死後の名誉のため、会社のパソコンのデータやスマホのデータ、机の中の書類などの整理をしました。
自殺をすると決めた日、その日は社員の給料日です。この日の給料はきちんと払える資金はありましたので、経理の社員と銀行で振り込みの手続きをすませました。自分の役員報酬は送金と同時に引き出しました。死んでしまった後現金が口座のままでは凍結されて引き出せない事を心配したためです。夜帰宅して、自宅のある場所に置いておくと、家内宛ての遺書にそう書き残していました。
仕事が終わり、帰宅しました。家内には何日か前に、「この日は夜現場の立ち合いがあるから、一度戻ってまた仕事
に行く」と話していました。家内と夕飯をすませ、午後9時をまわった頃、私は自宅を出て、会社近くの倉庫に向かいました。
令和元年6月20日の夜でした。