第1章:倒産までの状況(4)

6月に消費税の分割納付金の支払い予定がありました。金額で約200万、就任以来納税準備金は常にキープして納税準備預金に入れていましたが、この半年ほどはそれも運転資金にまわしており、プール金がありませんでした。納付は6月30日、約2カ月のうちにこのお金の工面をしなければなりません。また会社からの役員報酬もほとんど受け取れず、、会社への資金繰りと個人の生活費のために個人借り入れをした300万の毎月の返済にまわすお金も事欠く状況になっていました。

「何とかしなければ・・・」誰にも相談できず、私はたった一人で考えていました。

そして、社業もこなしながら、資金を調達できる方法・・・。

 

たどり着いたのは、FXでした。

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第1章:倒産までの状況(3)

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それ以外にも、事業計画に掲げた新規営業品目の開拓や、過去の恩義を重んじたがために受注してしまった不採算な大型現場などがあり、それらの手当も後手にまわり、日に日に経営状況は苦しくなっていきました。創業者に現状を招いている事への謝罪と、資金援助をお願いしましたが断られます。今までの信用実績から、保証協会からの融資が得られた事と個人資産のさらなる投入で一時を凌ぎ、不採算現場からの撤退など手当も進めますが、令和元年3月時点で運転資金が底をつき、ついに私は個人名義での借り入れをして会社に資金を入れます。

 

3月末日の真夜中、会社のデスクの前で今後のキャッシュフローを確認していた私は、あと3か月で致命的な資金ショートを起こす事に気づきました。

第1章:倒産までの状況(2)

しかし、順調に業績を伸ばせている裏側では、新たな問題を抱え始めていました。それは人員不足です。私の会社の生業は所謂現場仕事であったため、若い世代の人員確保ができず、また仮に入社をしても3K稼業ではなかなか定着してくれず、少しずつ、確実に直接の雇用人員が減っていっていました。営業の伸びとは逆に、自社力での施工能力は低下し、現場をまわすため外注や委託に依存する割合が増えていきました。外注に依存すれば当然利益率は下がります。その実情は当然数字として表れてきます。年を追うごとに営業売り上げは伸びているのに、営業利益が下がっていく。経営としては最も悪い現象です。

あわせて、建設業界での社会保険加入問題が行政により指導され、私はそれを1つの改革と捉え、積極的に保険加入を進めました。今思えば、同業他社と同じように騙し騙しこの問題をやり過ごしていればよかったのかも知れません。全員の社会保険加入を進めた事で、さらに経営状況を悪化させていきました。

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近況1

今日、ショッキングな連絡が入ってきた。以前好意にしていたカラオケパブのマスターが、コロナウィルス感染症にかかり、ほかに持病もあったため、先日亡くなったという。歳は60代半ば、私が出会ったのが7年前、小さな店だが、週末はいつも万卓で朝まで賑わっていた。私に、いい意味で遊び方や人との付き合い方を教えてくれた人である。「俺は死ぬまでこの店をやるよ」と話していたのを覚えている。私は、この1年は店に行っていなかったのだが、コロナが落ち着いたら、また顔を出しに行こうと思っていた。

近しい人の話では、コロナの影響で自粛要請があった後も、店を続けなければみんなの行く場所がなくなると、営業を続けていたらしい。恐らく、店で感染していたのだと思う。体調の変化はあったようだが、風邪だと言って医者にはかからず、かなり具合が悪くなってから受診、結果コロナウィルス陽性反応がでたようだ。最終的な死因はまだ聞いていないが、コロナが起因した事は間違いない。

私が思った事は、コロナによる死亡率は低いと昨今は言われているが、中高年世代は誰もが多かれ少なかれ何らかの持病を持っている。だから、まだまだコロナを侮ってはいけないと思う。

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感染予防に最大限努力をし続けなければいけないのだと痛感した。

昔馴染みだった人たちと連絡を取り、お焼香に伺おうと話をしている。

 

 

第1章:倒産までの状況(1)

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私は今から8年前、20年務めた会社を創業者より引き継いで、社長に就任しました。創業30年、年商1億円、従業員15名の小さな会社ですが、創業者は老齢になり健康に不安を感じ始め、私は今までの会社の実績をもとに更なる飛躍を目標に掲げて、社長に就任しました。

しかし会社は、私が就任した時点ですでに苦しい事情を抱えていました。リーマンショック以降の経済的影響によって蓄積された累積欠損と銀行からの借り入れ、創業者に対する退職慰労金の支払いなど・・・私はそのすべてを背負い、それでも会社を大きくし、自分の掲げる事業計画で進めれば、5年後には必ず債務超過の状態から脱する事ができる、やればできると、強い信念を持って事業を継承しました。

就任後の1年は1日も休まずに社業に努め、その後新たなスタッフにも恵まれ、3年後には年商1億2000万を達成し、苦しいながらも着実に事業を進めていました。

 

プロローグ

債権者の皆さん、本当に申し訳ございませんでした。ご迷惑をかけた事、一切の言い訳はありません。その事を考え、1年、何ら自らの思いを発信することは差し控えていました。少なからず倒産後の私に対する世間の声は聞こえていました。その中には、多くの間違った情報もありました。

ここから、私が何かを綴ることで、今更何かが変わるわけではありませんが、「私が経験した事が、この先の、誰かの役に立てるのなら」との思いから書き始める事にしました。これは同時に私自身の「けじめ」のためでもあります。

私が過ごした倒産前後の約2年、そして現在の状況など、書いていきたいと思います。

 

バンクラプトアドバイザー kuutiti

 

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ブログ開設

昨年の8月、経営する会社の倒産と個人の自己破産を裁判所に申し立てました。新型コロナの影響もあり、やっとこの8月ですべての処理が終わります。何より、ご迷惑をおかけしたすべての関係者の方々に、改めて深くお詫び申し上げます。

やっと、新たな仕事や生活環境にも慣れはじめ、私が体験した倒産前後の約2年の経験が、現時点で同じ悩みを抱えていらっしゃる方のお役に立てればと思い、情報発信をする事にしました。私が経験して一番感じた事は、破産申し立てをするタイミング、専任する弁護士との相性、そして管財人との信頼関係の構築、この3点がとても重要と思いました。法的な手続きはどうしても専門家にお任せするしかありませんが、経験した者の情報も同時にあれば、状況の整理もしやすいのではないかと思います。お伝えできるのはあくまで私の経験の範囲ですが、ご興味のある方はぜひご連絡を下さい。どうぞ宜しくお願い致します。

バンクラプトアドバイザー  kuutiti

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